歯髄保存療法

お口の健康を担う
歯の神経を残す
歯髄保存療法
歯髄(しずい)は、歯の神経と周辺の血管によって構成されています。単に外からの刺激を受容するだけの感覚器官ではなく、過剰な刺激を感知して防御壁となる象牙質を新たに形成したり、細菌に抵抗する免疫細胞を供給したりといったさまざまな役割を担っています。それだけに、歯髄は可能な限り保存することが望ましい選択肢です。
歯髄保存療法とは

歯髄保存療法とは、歯の神経をすべて取り除いてしまうのではなく、感染した最低限の部分だけを除去し、生きている神経は残す治療です。
歯髄保存療法は、むし歯の進行状態によって「間接覆髄法」・「直接覆髄法」・「部分断髄法」・「全部断髄法」の4つのうちいずれかに分かれます。神経の保存に必ず成功するわけではありませんが、やみくもに神経を除去していた従来の治療に比べて歯の寿命を延ばせる可能性が高まりました。
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間接覆髄法
深いカリエス(かろうじて神経が出ないくらいの大きなむし歯)が近接している歯髄を、健康な状態で保存する処置です。歯髄の状態が正常、あるいは可逆性歯髄炎(歯髄を取り除かなくても回復の見込みがある状態)と診断された症例に適応します。
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直接覆髄法
むし歯除去中の露髄(神経が出てしまうこと)や外傷による露髄、形成中の露髄などに対して、歯髄の健康を保つためにおこなう処置です。
歯髄の炎症程度が成功率が左右するため、歯髄にダメージが及んでいない症例に適応します。 -
部分断髄法
カリエス(むし歯)や外傷が原因で傷んでしまった歯髄の一部を取り除き、その奥にある健康な歯髄を保存する処置です。歯髄保存療法の中でもっとも多い処置でもあります。
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全部断髄法
歯冠部(歯ぐきより上の歯質部分)の歯髄を根管口部分まですべて取り除き、歯根部に残る健康な状態の歯髄を保存する処置です。
歯髄の持つ重要な働き

機械的、化学的、温度的刺激を痛みとして伝える役割もあります。
その他、歯髄は過剰な刺激を感知して歯髄内壁に象牙質を添加したり、むし歯などの細菌感染に対して歯髄炎という炎症を起こしたりもします。
歯髄を保存するメリット
歯質の良い状態で維持

神経を抜く処置(抜髄)をおこなわないため、健康な歯質を削らずに済みます。
また、刺激の強い薬剤で根管内を処置する根管治療も避けられるので、薬剤の刺激で歯質が弱まってしまう心配も不要です。治療によって歯質が弱くならないため、将来的に歯が壊れてしまうリスクを軽減できます。
痛む感覚・噛む感覚や温度を保持

一部でも神経が残れば、痛みの感覚や温度に対する感覚を失わずに済みます。
また、歯髄を取ると咬む力に鈍感になってしまうと言われていますが、歯髄を保存することで咬む力に対する敏感さも保てるので、必要以上に歯に強い力をかけてしまうことを避けられます。
正常な歯根の成長を継続

むし歯が重症化するタイミングで歯根が未完成の状態だと、神経を除去することでその歯の歯根の成長が止まってしまいます。歯根の壁が薄い状態では咬む力に耐えきれず、将来的な抜歯のリスクが高まります。
歯髄を保存すれば、幼若永久歯(成長途上の歯)の歯根が正常な成長を続けられます。その結果、歯の寿命も延びることが期待できます。
神経を残せなかった場合は根管治療を

歯髄保存療法に適応する症例であっても、結果として歯髄を保存できず後から除去することがあります。その場合は、神経を抜いた後に根管治療をおこないます。
根管治療は、歯の中心部にある歯髄までむし歯が進行してしまった際に、神経を取ることで歯髄をきれいに清掃し、洗浄・消毒のうえ薬剤を詰めてむし歯の再発を防ぐ治療です。
歯髄保存療法の症例紹介
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歯髄保存療法の詳細情報
診療前の注意点
- 自費治療になるため、保険診療に比べ費用がかかります
- 歯髄の確定診断ができず、術中にも不明確であるため、後から問題が発生するリスクがあります
- 治療の成功には時間をかけた丁寧な処置が必要不可欠であるため、治療時間が長くなります
- 治療の直後は歯がしみることがあります